「もちろん文句はないですよね?」





 セックスの時はセーブする。でないと彼を殺しかねないからだ。

 小松くんのなかで果てた後、自身を抜いてゴムを外す。先に彼のなかでイッたトリコのでぐしょぐしょなソコには無駄な安全具と指摘されそうだが、ゴムの目的は病気を予防してではない。
「ココはなんでゴムつけるんだ? 体液を小松にいれたくないって言うならキスだってしないだろ」
「でも途中からはしない」
 トリコの頭をひいて唇を合わせる。口内に溜まった唾液をトリコに移せば、さすがに眉をしかめた。
「夢中になってる時は無意識だから危険だ。トリコだから痺れる程度だけど、小松くんなら確実に寝込むほどやばい」
 精液なんて夢中になった証を体内に直接いれたら、小松くんは死んでしまう。ゴムを使わなければ本当に危険なセックスだ。
「余裕ですね」

 ぐったりと横たわっていた小松くんがぼくを薄めで見上げた。情事の後だというのに、色っぽさより恨めしさが勝っているように見えるのは気のせいか?
「ココさんが我を見失うことってないんですか? ぼくに魅力がないせいでしょうか」
 盛大なため息はわざとらしく、そしてぼくを責めている。
「誤解だ」とぼくはすぐに抗議したが小松くんは信じてくれない。頼みの綱のトリコはおもしろそうに傍観している。
「ぼくの毒で小松くんに害を与えたくないんだ。わかってほしい。決して魅力がない訳じゃないから」
「わかった上でココさんにも我を見失って欲しいと思ってます。体質を気にする余裕もないぐらい、のめりこんでください」
 小松くんはぼくの肩に手をおくと、額、目元、頬、鼻先、そして口へとキスをくれた。
 なにかを訴える小松くんは、ふだんの驚きやすい(?)性質とはかけ離れて落ち着いている。肝が据わっていると言えばいいのか、大人だ。成人男子にむかって言うのも変な話だけど。
 トリコを「さん」づけで呼んでいたし、小柄なので自分より若いと思ったけれど・・・ただの思い込みか?
「あの、小松くん」年いくつ? なんて、キスの合間に聞く質問ではないけど、無粋だというなかれ、とても気になる。
 しかし聞けなかった。
 背中には毛布の感触。小松くんがぼくを押し倒す恰好だけど、実際はトリコが背後に回って肩を引いたのだ。そのまま上から押さえつけられる。

「今日はたっぷりと愛し合いましょう」
 にこりと小松くんがぼくを見下ろす。 
「もちろん文句はないですよね?」
 こんな状況でなければ嬉しい台詞に、ぼくは冷や汗を感じた。後で小松くんの年を聞いてみよう。彼が年下なら、不甲斐ない自分を反省しよう。彼が年上なら、翻弄されても仕方がないと納得しよう。
 ぼくを包むほほえみがまぶしい。





end


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