「仕方ないなぁ」





 ふとした瞬間に、小松くんが言ったその言葉を思い出す。困ったと言わんばかりの彼の口調。困りながらも受け入れる度量。
 凄いひとだと思った。 
 一流ホテルの料理長。だけどソレだけ。見た目通り気の弱い性格で、トリコが彼と行動を共にしている理由がわからなかった。
 遺書を用意しながらトリコの捕獲に付き合う小松くんは奇特だ。トリコと一緒にいるのは、暴風雨のどまんなかにいるのと同じで、命がいくつあっても足りない。現に一度死相が見えた。死相の原因であるトリコは呑気なもので、本気で他人の振りをしたくなったものだ。
 小松くんはトリコを本気で怒りながらも許した。許す理由がわからなかったが、今ならわかる。
「仕方ないなぁ」と、諦めではなく受け入れたのだ、トリコを。
 食いしん坊ちゃんを羨ましく思った瞬間だ。




end


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