小ネタ
『マグカップ』
 
 
 
「お誕生日おめでとうございます、ココさん!」
「ありがとう小松くん」
「これ、プレゼントです」
「開けてもいいかい?」
ラッピングされた箱の中から出てきたのは、陶器のカップだった。
通常のものより、ふた周りほど大きいが、形はマグカップのようだった。
「シンプルな形だけど、味わいのある色がステキだね」
「ありがとうございます!それ、ボクが作ったんです」
「小松くんがこのカップを?」
「はい!」
ほら、とココの手からカップを受け取り、底を見せると『COCO』と刻んであった。
「最近、器に興味があって、焼き物教室に通ってるんです」
「素晴らしいね」
「まだ大したものは作れませんけど」
「ありがとう、大事にするよ」
「お菓子も作ってきました」
「じゃあこのカップでティータイムにしよう」
「ココアにしませんか?ボク、最近ココアに凝っているんです。最後に生クリームを少し入れると美味しいんですよ」
何から何まで持ってきていたのか、小松の鞄からはホーローの小鍋まで出てきた。
「傍で見ていていい?」
「照れますね」
パウダーのココアを鍋に入れて水と砂糖を加える。
焦がさないように小鍋で練り上げる小松の姿は、サニーではないが『美しい』と思えた。
「あ、カップを温めてもらっていいですか?」
「お安い御用だよ」
見惚れていたのを感づかれたのかと思ったが、小松は沸騰させないように牛乳を注ぐことに集中していた。
「手際の悪いところを見せちゃって、恥ずかしいです」
「めったに見られない小松くんを見れたのは嬉しいよ」
ハント先での失敗を見られるのよりも落ち込みます、と頭を垂れる姿は見ない振りをする。
 
「あっ」
マグカップにココアを注ぎながら、小松が小さく呟いた。
「どうしたの?」
「カップが大きいと…中に入る量も多いんですよね…。量、多くないですか?ココさん」
「ココアが足りないの?」
「いえそんなことはないですけど」
「じゃあ問題ないよ、ココアは好きだから」
「すみません」
いただきます、とティータイムが始まる。
マグカップをそっと持ち上げると、ある感覚に気が付く。
「――持ちやすいね」
そう言うと、小松の顔がぱっと綻んだ。
「よかった!」
ココの手は、体格と同様にかなり大きい。
なので市販のカップやカトラリーのサイズは正直使いにくいのだ。
今までの食事中に、そんなところまで見ていてくれたのかと思うと嬉しかった。
「あとですね」
向かいのテーブルから小松の手が伸びてきて、マグカップを包むココの手の上からそっと添えた。
「マグカップってこう持つと暖かくて幸せですもんね」
 
カップから伝わる熱よりも暖かい何かが、ココの全身を包んでいく。
 
「暖かいね」
 
ココアを飲むのは、もう少し後でもいいかな?とココは思うのだった。





ココ誕リベンジ。
イベントネタは、普段浮かばないので、ココ誕が出来て嬉しかったです(^^;)