小説
『青い果実』





おそらく。
経験からくる勘が、トリコの中でそれを決定づける。


トリコが初めて男を抱いたのは2年前だ。
相手はハントに同行してきたIGOの青年職員。

「オレ…トリコさんなら…その…」

半ば興味本位で抱いた。お互い男同士は初めてだったが、トリコは彼から色々な事を学んだ。
テクニック以上に学んだのは、眼だ。
トリコを見る、心酔の眼差しの中に宿る、情欲の色。彼に限らず、その色を持つ者の肩を押せば、相手は容易に崩れ落ちた。
性欲処理の女に不自由したことはない。が、物理的に女に不自由した時、男は重宝した。
それにその手の男は後腐れなくて楽だった。
トリコにとって男を相手にするのはその程度のことだった。
最初の青年など、名も覚えていない。


おそらく。
と、トリコにしてみれば不確定要素の多い考えの理由は、その眼の“色”だった。
確かに今、存在するのだ。その“色”は。
だがトリコの目の前でそれが消えてしまえば、判断に迷う。
“色”のある時に肩を押せば、たやすく落ちるだろう。だが、いざ押そうと近付けば…

「あっ!トリコさん!あんな所に『雪の実』が実ってますよ!木になってる時は色が少し青みがかっているんですね!キレイだなあ。何とかあの色を保ったまま調理出来ないかなぁ…!」

…ただのタイミングの問題なのだ。わかっている。
好奇心旺盛な料理人は、くるくると瞳の色を変え、トリコを困惑させる。

「喰える…はずだよな?」

思わず呟けば

「えっ?食べるにはまだ若いんですか?残念だなぁ…」

と、にべもない。

「トリコさん、青い果実が美味しそうなのは何故なんでしょうね?」

それはこっちの台詞だ。
目の前で笑うこの果実が完全に色づくのはいつなのだろう。

「さあな。だがオレはこんな場合、熟すまで待つんだ。視界から外さずにな」
「トリコさんらしいですね」

そうしてまた、色を変えるのだ。

「今回の獲物は雪の実じゃねえ。ホラ行くぞ小松!ウロチョロすんな!」


小松を常に視界に入れて、時を待とう。

食べ頃は、逃さない。




END





まだデキてない頃のお話でした(^^)

トリコさんは男にモテるだろうなー。
ソノ気のない男もトリコならケツ差し出しそう(下品)。